アルバイトを通して学ぶ

私は短大生の頃、生まれて初めてアルバイトをしました。元々友達がスーパーのレジ係のアルバイトをしており、今どうしても人が足りないのでお願いできないかと誘われたのがきっかけでした。私はどちらかというと内気で、人と話すのがあまり得意ではない方だったので、接客の仕事なんかできるわけがないと一度は断りました。しかし、これから先の就職活動のことなどを考えると、いつまでも人見知りでいるわけにもいかないなと思い直し、思いきって挑戦してみる事にしました。

最初はやはり、苦労の連続でした。レジの操作などは思ったよりも難しくはなかったのですが、とにかく「声が小さい」「笑顔が足りない」と指導を受けました。自分では精一杯大きな声を出していたつもりだったのですが、傍から見ると蚊の鳴くような声にしか聞こえなかったようなのです。顔も、自分では笑っていたつもりだったのですが、緊張のあまり常に引き攣ってしまっていたようです。こんな状態でお客様の前に立つのは恥ずかしい、変に思われないだろうかと、最初は本当に不安でした。研修期間を終え、初めてひとりでレジに立った時は、緊張のあまり手が震えてしまいました。

けれども、日にちを重ねるにつれ、徐々に接客の仕事が楽しいと思えるようになってきました。それは、お客様から掛けていただく「ありがとう」の言葉に励まされたからでした。これまでの私は、人と関わる事に苦手意識を持っていたこともあり、自分が誰かの役に立てるとは思ってもいなかったのです。しかし実際には、重い荷物を台まで運んであげたり、袋に入れやすいように工夫しながらレジを通したりといった、本当に小さなことで、お客様は「ありがとう」と言ってくださったのです。人の役に立つということは、もっと難しいことのように思っていた私は、初めてお客様から「ありがとう」の言葉を頂いた時は驚いてしまいました。「こんなに小さなことでもいいんだ」「私でも誰かの役に立つことができるんだ」と、目から鱗が落ちたような気持ちでした。それと同時に、今まで感じた事がないくらい、とても嬉しい気持ちになったのです。

その喜びに気づいてからは、どうしたらお客様に気持ちよくお買い物していただけるだろうかと常に考えるようになりました。すると、作り笑顔ではない笑顔が自然にこぼれ、声も明るく大きく出せるようになっていきました。自分でも、こんなに自分は明るかったのかとびっくりしたほどです。すると徐々に顔見知りのお客様も増え、中にはわざわざ私のレジを選んで並んで来て下さる方まで現れるようになりました。今まで内気だった自分が嘘のように、人と接するのが大好きになっていきました。

もちろん、楽しい事ばかりの毎日ではありませんでした。沢山のお客様と関わっていく中で、私がよかれと思ってしたことが、相手にとっては迷惑だったということも少なくなく、時には苦言を頂戴することもありました。ショックで心が折れそうになったことも何度もありますが、その度に人の優しさに助けられ、また頑張ることができました。嫌な事があっても、人と話す楽しさ、人に喜んでもらえる嬉しさを考えれば、大したものではないと思えたのです。

アルバイトを始めるまで私は、学校を卒業したら、あまり人と接しなくても良いデスクワークなどの仕事に就こうと決めていました。しかしアルバイトを通して、人を喜ばせることの楽しさ、嬉しさに気づいた私は、卒業後、ドラッグストアで働く事になりました。10年近く経った今でも、毎日沢山のお客様と関わり、楽しく仕事を続けています。あの時アルバイトを始めていなければ、絶対に今の自分にはなれなかったと思います。考え方や、性格まで前向きにさせてくれたアルバイトの経験は、今も私の大切な財産となっています。