割烹料理屋での上司たちとの関係

私は以前、OLをしながら割烹料理屋と呼ばれる店でアルバイトをしていました。4人がけのカウンター席と4人がけのテーブル席が2組だけの小さな店に、女将と呼ばれるオーナーと、その下には支配人と呼ばれる男性とバイトリーダーの女性が上司にいました。

指導には厳しい人たちでしたが、理不尽な事や無理な事を言ってくる訳ではなかったので、仕事をしやすい環境でした。また、来店されるお客様も常連さんが多く、新入りの私にも目をかけて頂きました。

アルバイトを始めて1ヶ月程が経ち、怒られる事も減ってきた頃、新たに同い年の女性がアルバイトとして働き始めました。その女性も私と同じ様に指導を受けていたのですが、私に比べ、仕事の覚えが少し悪く、女将がイライラしていることが見ているだけで伝わりました。そんなある日、女将がそのアルバイトの女性を呼び、お客様と話していました。その日のホールは私を含め3人でしたので、満席の状態で実質1人で配膳をし、フラフラになって帰った事を覚えています。その配膳中、女将が「私たちが20代の頃は、カウンターやテーブルの下で、ハイヒールで踏まれたり、痣ができる程蹴られる事なんて当たり前にあったのよ。」と話している声が聞こえました。配膳をしながらだったので、前後の話は聞こえませんでしたが、その声だけははっきりと聞こえました。女性が1人で自分の店を出すには、痣ができる程蹴られても「当たり前」と思わないと持てない物なのかと、その時は思っていました。

その後その女性アルバイトから「相談がある」と言われ、1度だけ仕事帰りに飲みに行きました。お酒が進むに連れ、女性は本題を話し出しました。彼女曰く「私は居酒屋のウェイトレスのバイトのつもりで入ったのに、気付くとお客さんと話ばかりさせられて困っている。先日はお客さんに連絡先を聞かれて断ったら、女将に怒られてしまい。どうして良いか分からない。」との事でした。私たちの時給は深夜のコンビニと同じ位の額でしたので、もし、その事が事実なら納得いかないと思ってしまいました。

後日、彼女の仕事中の様子を見てみると、話していた通りでした。しかし、私たちも本業を持っている大人なので、私が口出しして事を荒立てる事はないと判断しました。

それから暫くして、彼女は店を退職しました。彼女が辞めた後、上司達は「やる気が無い」や「被害者意識が酷い」等、聞くに耐えない悪口を言い続けました。この件は店と彼女との事なので、従業員の私が口を挟むことではありませんが、その姿はあまりに見苦しく、下の者の事などお構いなしと思っているのかと感じました。

そんな事を思いながらも働き続けていると、アルバイト先に本業の上司が来店しました。本業の職場はアルバイトを禁止していなかったので、その場を楽しく食事をして終わったのですが、翌日、その上司に呼び出され、アルバイトを辞める様に言われました。理由を聞くと、「君がアルバイトをしている店は、元クラブママである女将が経営しており、バイト先の上司やお客さんもその頃からの付き合いの方が多く、割烹料理屋のアルバイトと呼ぶに相応しくない。」と言われました。

本業を失う訳にはいかず、私は女将に相談しました。たとえ3ヶ月とはいえお世話になった店を私の都合で辞めてしまうのだから、なるべく迷惑をかけないような止め方をしようと、話を切り出したら、「辞めたいだけでしょ。明日まででいいわ。」と吐き捨てる様に言われ、睨まれ、その後話をしてもらう事すらできませんでした。女将が「明日まででいい。」と言ったのは、店の周年記念をしており、いつもより客入りが多く、イベントは翌日まで設けていたからです。その日の気分はどうしても沈んでしまいましたが、明日までと言う区切りもできたので、気持ちは楽でした。

翌日のアルバイト出勤前、女将から「月末まで働けない?」とメールがありました。その日、本業の上司にアルバイトの事を聞かれ、経緯を報告したばかりだったのですが、もう1度上司に報告すると、「1度決まった事だろ。」ともっともな事を言われてしまいました。

アルバイト先へ行き、女将に本業の上司とも経緯を伝えると、昨日とは打って変わり、「無理を言って悪かったわね。」と優しく労って頂きました。その日の帰り、支配人とバイトリーダーにはそれぞれ個人的にお礼を言って店を出ました。少し嫌な気持ちはしたが、きちんと止められて満足していました。

翌日、いつも私がアルバイトに出勤していた時間に支配人から電話がかかってきました。少し不審に思いながら電話をとると、「もう出勤時間過ぎてるよ。どうしたの?」と言うのです。退職の際の1件を伝えると、「急に辞められたら困るよ。こっちもシフト組んでるんだから。」等、電話先で散々怒鳴られたので、退職日の決定は女将がした事を伝えると急に静かになりました。これで話は終わりかと思っていたら、「いいから店に1度来なさい。挨拶も無しに。」と言われました。その日は本業を遅番出勤していたので、今からは行けない旨を伝えると、「仕事が終わったら来い。」と言われ、電話が切られました。後日振り込まれる給料の事もあるので、仕事が終わると女将に連絡をしました。支配人からの電話の内容を伝えると、「月末まで働くのは難しい?」と猫なで声でお願いされました。これをされ、初めて義理を果たす人たちではないと思い、自分の考えをはっきりと伝えました。すると、「あっそ。ご苦労様。」と電話を切られました。

在職中、お客様が「ここのアルバイトは直ぐに辞めてしまう」と女将をからかっていた事がありましたが、この時、ようやく理解できました。