ホステスのアルバイトを辞める時に遭遇したトラブル

私が大学生だった頃の話です。当時私は学生業の傍らホステスのアルバイトをしていました。田舎から上京してきた私は生活費を自分で工面するためには1番コスパがいいと考えてこのアルバイトを選びました。

私が勤めていたお店は大きな店ではありませんが、お水特有のドロドロとした派閥が他店よりは少ない比較的良心的なお店でした。そこで悪戦苦闘しながらも大学在学中の4年間働き続けました。会話もそこそこでき、ワクなのでお酒もたくさん飲めたので店にも常連さんにもかわいがっていただいていました。ママからも「大学卒業後もここに残らないか」という冗談か本気かが分からない打診も何度かされました。しかし、もともとこの仕事を始める前から決めていたのが「ホステスのアルバイトは学生の間だけ」というこのアルバイトのタイムリミットでした。華やかな世界ですが、この業界に骨を埋める覚悟はできず、大学4年生になると周囲の例に漏れず就職活動を始めました。どうにか夏休み前に内定も獲得して進路も確定したので、ママにお店を辞める事を伝えました。入店前の面接の時に、ここで働く理由を「大学在学中の生活費のため」とママに説明していたので、お店側にはすんなり話も通りました。

残る問題はお客さんです。私も当時はホステスの端くれだったので自分のお客さんを抱えていました。ホステスの世界にも営業ノルマがあるので、そのお客さんをどうにか呼び出して毎月のノルマを達成していました。そうしたノルマ達成のために色恋を仕掛けるのも私たちホステスの仕事です。遊び慣れているお客さんならば遊びと割り切ってホステスの営業にも対応してくれます。たちが悪いのが遊び慣れていない、入れこんでしまうお客さんです。多少のわがままはいくらでも聞いてくれるので毎月のノルマ達成のためには彼らは欠かせない存在です。私にもそうした本気モードのお客さんが何人かいました。そういう人たちとの縁を切る時に私はトラブルに遭遇しました。

私のお客さんの中でも特に私に入れこんでいたお客さんをAさんとします。Aさんは出会った当時40代半ば、初対面の宴会のお席で私を気に入ってくださりそこから週に2・3回のペースでお店に顔を出してくれるようになったお客さんです。Aさんはお店に通う割にそれほどどぎつく言いよってこない人でした。Aさんと出会ってから仕事が本当に楽になりましたので、私もAさんに心から感謝していました。そして、いざお店の卒業のことを伝えるとAさんはそれまでの奥手な態度を一変させて押せ押せにアタックしてきました。「お店を卒業してもデートできるよね(*店外デートをAさんとしたことはありません。同伴かアフターだけです。)」「○○(私の就職先として伝えている土地。実際は違う場所。)なら新幹線でいつでも会えるね」「卒業祝いで旅行に行こう」など今までのAさんからは考えられない積極性にちょっとびっくりしました。ですが、もうお店を辞める今となってはAさんをつなぎとめておくことも必要ないと思い、適当にあしらっていました。Aさんからのメールの返信も前ほどしっかりやらないようになってしまいました。

そんな時、お店の卒業まであと一ヶ月と少しになったくらいでしょうか、私の周りでおかしなことが起こり始めました。私が住んでいたアパートはアパートの下のゴミボックスにゴミ袋を出していくシステムなのですが、ある時私が捨てていたゴミ袋が出した後に一度空けられている事に気がつきました。間違えて捨ててしまった書類を引っ張りだそうとして一度ゴミボックスに出した自分のゴミ袋を引っ張りだすとゴミ袋の結び方が私の結び方と違うのです。また、知らない電話番号から無言電話がくるようになりました。Aさんからのメールもだんだん物騒な内容になってきました。中をひっくり返して確認すると捨てたはずの古いヘアブラシやシャツがなくなっていいました。最初はゴミ漁りや無言電話をAさんと結びつけていませんでした。ただ、ある日お店が終わって同僚の女の子と帰る時に今日は来店していないAさんが店の少し陰になっているところに立ってこっちを見ているのに気づきました。その時は気づいていないフリをしましたが本当に怖くて、その日は同僚の女の子の家に泊めてもらいました。そこからAさんとゴミ漁りをつなげて考えるようになりました。

Aさんに私の家を知られていると知った時は本当に怖かったです。ストーカーとして警察に相談しようかとも一瞬思いましたが、昔警察でストーカー絡みで本当に嫌な経験をしたのでもう二度と警察は頼りたくないと思い、お店に事の次第を相談しました。ストーカー被害を報告するとママやスタッフはAさんに対して大激怒。相談の末に店で1番強面の黒服のボス的おじさんが私の送り迎えを担当して、Aさんがアパート近くで現れ次第「話し合い」をするということで話がまとまりました。

ボディガードをつけてもらってしばらくすると、ついにAさんがアパート前で私がひとりの時に声をかけてきました。正直あの時Aさんが何を言っていたかは覚えていません。ただ馬乗りになって顔とお腹を何発か殴られました。組み敷かれる前に引っ張った防犯信号のおかげで近くで車を停めていた黒服が飛んできてくれました。黒服は私からAさんを引きはがしてママと相談してきめていたことをAさんに言いました。「警察沙汰にはしないから二度と○○(私)に近寄るな。店の敷居も跨ぐな。お前の行動次第ではお前の上司に話がいくことになるぞ(Aさんの会社のとっても偉い方がうちの常連さんです)」現行犯を抑えられた事と黒服の迫力にびびったのかAさんは素直にうなずきました。その日を境にゴミ漁りも無言電話もなくなり、Aさんを見かける事もなくなりました。

今回のことは自分が蒔いた種なので何とも言えません。ただ本当に怖かったのは事実です。こういった人間関係でお金をもらうようなアルバイトをする際は、その人間関係の清算まで念頭におきながら仕事をすることを強くおすすめします。